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退学者0名!
「学生が”愛される歯科衛生士”になる為の学科運営」

東京医薬専門学校学科長渡邉(わたなべ)さん
退学者0名!「学生が”愛される歯科衛生士”になる為の学科運営」

学科長自ら学生の実習先を開拓!

いま学科長をされていますが、実際にどういった活動をされているんでしょうか。

渡邉先生私はこの学校の立ち上げからいまして、いま8期生が入学してきています。学校の先生としては15年目で、この学校でも最初は担任としてクラスを持っていました。学校の立ち上げ直前からこれまでに2度の出産を経験しながら、3期生が入学してくるときに学科長になり、学科の運営に携わることになりました。

学科運営の内容は幅広く、学校内でいうと夜間部を含めた全6クラスの管理や継続についての検討、先生の相談役だったり、新人の先生のサポートや在校生の面談もしています。私は担任業務が大好きなので、学科長になった後も担任としてクラスを持ちながら、さまざまな業務をしています。

幅広く学校全体を見ていると思いますが、学校外の業務もあるのでしょうか。

渡邉先生私の主な業務は「学校外の業務」ともいえます。江戸川区の歯科医師会の方と懇意にさせていただいている学校でもあるので、会合や研修に参加したり。地域のお祭りでは先生方と一緒にブースを出させてもらって学校や職業の認知度を高める活動をさせてもらっています。業界の先生方とは求人のお話や学生が学びたい実習内容を反映してもらっています。

それから、加盟している東京都歯科衛生士会の会合にも出たり、臨床実習先の開拓の活動もしています。そのほかに、うちの学園が東京で3校、全国で7校の歯科衛生士科があるので、そこの主任が集まって国家試験合格のための模擬試験の分析や今後の対策、教科書やカリキュラム、海外研修プログラムをどうするのかを検討しています。

子育てをしながら、そこまで多岐にわたる業務ができるのはすごいですね。

渡邉先生9歳と2歳の子どもを育てながらしています。私が生まれも育ちも葛西なので、近くの保育園に預けて、毎日ダッシュしています(笑)。たまに隣で待たせて、仕事の続きをやることもあります。

自分が歯科衛生士というのを忘れるぐらい様々な業務があります。頭も体もたくさん使って、毎日楽しく充実した日々です。

実習先の開拓はどういうものでしょうか。

渡邉先生臨床実習といって、実際の歯科医院などで900時間の実習を行うことが歯科衛生士になるための決まりとしてあります。期間として1年ちょっとですが、実習がつらくて辞めてしまう子がすごくいるんです、どこの学校でも。でも、それは本当にもったいないので、学生が学びやすい空間で実習ができるように、卒業生が就職したクリニックに出向いて、「実習先になってほしい」とお願いしています。

新人を育てるのと学生を育てるのが似ている部分もあるので、それがシステム化されていくとクリニック側のメリットも増えるので、そこをしっかりお伝えして、教育にご賛同いただいています。

私が開校時からいるので、9年の歴史の中で卒業生の人脈はかなりあり、「渡邉先生のお願いは聞かなきゃいけない」ってみんなが思っているんです(笑)。なので、お願いすれば「院長に言っておきます」って感じで卒業生が動いてくれることはたくさんありますね。本当にありがたいですし、卒業生も含めてみんなで学校づくりをしたいんです。そういう仕組み作りをしたいことも卒業生に説明して、助けてもらうことは多いです。

アットホームで学生が帰れる場所を作ってあげたい

卒業生とも継続して連絡を取られているんですね。

渡邉先生そうですね。SNSで繋がれるのですごく便利です。多くの卒業生がいる中で、主任やリーダーをやっている子も増えてきて、学生の実習指導に協力してもらえたりします。

卒業生がいることは学生側にとっても安心できますし、卒業した後でも相談できる先生がいることも大きいと思います。

渡邉先生そうですよね。卒業しても相談場所があるのはすごくメリットで、よいことだと勝手に思っています。学校の特徴といえるかもしれませんが、卒業生が本当によく顔を見せに来るんですよ。私に限らずほかの先生も慕われていて、「ちょっと職場での悩み相談や転職のアドバイスをしてほしいんだけど、先生いつ暇?」みたいなノリです(笑)。「暇じゃないよ(笑)」とか言いながら、多いときは月2~3人卒業生が来ますね。

私自身もアットホームで学生が帰る場所があるってことをすごく大切にしています。そこはすごくこだわってやってきました。私が母親っていうか母性が溢れているので、自分の子どもたちだけじゃ受け止めきれない母性を卒業生や在校生に受け止めてもらっている感じです(笑)。彼氏と別れて相談に来て、大泣きする子も普通にいますからね。

学生にとっては一大事ですからね。

渡邉先生そうなんですよ。いまの年代の子たちにとっての別れはすごくつらいから、それを吐き出させて、「結婚する前でよかったね」とか言える間柄を作ってあげたいので。そのスタンスは私だけではなく、ほかの先生たちもそうなので、全体的にそういう雰囲気になっています。担任の先生は学生の悩みをたくさん聞いています。

学生にもそういう雰囲気は伝わっていて、普通は学校が終わったらすぐ帰るのに、特に用事もないのに学校に残って話していたり、わざわざ職員室寄って帰ったりする感じですね。

学科長として、どんな人に入学してもらいたいですか。

渡邉先生素直で、明るく、元気であれば少しお勉強が苦手でも!「とにかく人が好き」「誰かの役に立ちたい」というベースがあれば、いくらでもなんとでもなると思っています。勉強が難しそうと思う子も多いんですが、みんなスタートは一緒ですし、できないことをできるようにするのが学校のお仕事なんで、「私に仕事させてね」って気持ちです。保護者の方にもそう伝えていますね。

「私に仕事させてね」っていい言葉ですね。

渡邉先生できなくて当たり前ってスタンスです。とにかく人が好きで、人に興味があれば、相手主体で考えられるので、それがあれば良い歯科衛生士になれます。そこが第一ポイントです。

それから、人見知りやコミュニケーションが苦手って悩む学生も多いですが、仕事モードとしてスイッチが入ればできる子が多いんです。人見知りでも構わないし、無理に相手に合わせなくてもいい。「プロとして自分らしく」って切り替えるだけで、ずいぶんコミュニケーションが楽に取れるようになると思います。

たとえば、言葉数が少なくて悩む子もいますが、すごくベラベラ話すよりも誠実に映ることもありますし、ひと言の重みとして価値を持つことも多いので、自信を持っていいわけです。

学校全体で年間の退学者0名を実現

すごく学生の個性を尊重していると思いますが、時代とともにそうなってきたんでしょうか。

渡邉先生時代とともに変わってきましたね。昔は体育会系のノリでしたからね。一つ大きなレールを引いて、「全員ここに頑張ってついてきて!」というような。でも、私は昔ながらのやり方を踏襲しない学校にしたかったんです。昔からあるだけの校則やシステムを重んじて、それを信じているような学校にはしたくなかった。時代の流れとともに学生さんも変わります。明らかに10年前と今の在校生は違いますからね。

学校が大切にしていることと私が大切にしていることが一致して、成果につながると思っています。いまは教員と学生との距離が比較的近く運営できていて、強いリーダーシップで引っ張っていくというよりは、先生方が学生のサポートに回っているので、いいバランスだと感じています。

そういった運営をすることで退学率の軽減などに影響しているのでしょうか。

渡邉先生昨年度(2020年)の実績で、6クラスすべて退学者は0名でした。コロナ渦でオンライン授業など初めての試みも多かったんですが、一人も退学した人はいませんでした。

それは本当に驚くべきことだと思います。「辞めたい」って言ってきた学生はいるんでしょうか?

渡邉先生たくさんいますよ(笑)。「辞めたい」って言っても辞めた人はいないです。こちらとしてはひたすらに「今じゃない」「辞める決断をするならもう少し先」って言い続けていましたね。

そのフォローが大きいと思いますが、実際にどうやっていたんでしょうか。

渡邉先生とにかく信じて頑張っていけば、ライセンスは取れるようにしてあげられるから、「辞める決断は今じゃないよ」と言い続けました。引き留めるというよりは本気でそう思っているので伝えた感じです。

入学してくれた学生がライセンスを取って、プロとして送り出してあげることにこだわってずっとやってきました。3年前に入学してきた学生では2クラスともに誰も辞めずに100%卒業したんですよ。

つまり「入学生=卒業生」になったんです。それも全員が歯科衛生士のライセンスを取りました。その自信が私の中にあって、在校生も頑張り続ける実力と能力を持っていると信じているので、「今じゃないよ」って本気で伝えて、思い留まってくれたり、乗り越えてくれて大きな結果につながりましたね。

学科長が考える歯科衛生士の魅力

先生から見て、通っている学生は楽しそうですか。

渡邉先生そうですね。コロナの影響で大打撃は受けていますけど楽しそうですよ。卒業するときに、「この学校でよかった」ってみんな言ってくれますね。うちの学校の特徴でもあるんですけど、卒業生の紹介で入学してくる生徒がすごく多いんですよ。妹さんとか部活の後輩とか、就職している卒業生がいる医院の助手さんとか。誰かのつながりで入学してくる生徒がすごく多いので、薦めてもらえる学校ではあると思っています。

いい面ばかりに見えますけど、人間対人間なので実はすごく大変なんですよ(笑)。ときには本気で叱ることもあります。ただ、それは愛だと伝えています。

学科長自身もすごく楽しんでいるのが伝わってきます。

渡邉先生学生は200人以上いるので、毎日何かしらの事件は起こしてくれるんですけど、本当に学生たちはかわいいです。いまの子はみんなすごく素直でまじめ。個性を尊重していくことで、学生が「私が私が」ってならないんです。「みんな一緒に」って感じの子が多くて、時代の違いも大きいですが教員側からするとすごくやりやすいです。

では、学科長が考える歯科衛生士の魅力はどういったところでしょうか。

渡邉先生一番は、やっぱり患者さんに感謝される仕事というところです。どこでも言われているセリフですけど、本当にそう思います。

「人の役に立ちたい」という根底のニーズがクリアされているわけなので、患者さんから「ありがとう」って言われることはすごく大事だと思います。そのためには、自信を持って患者さんの前に立つことが非常に重要で、その自信を身につけさせて卒業させてあげることが、学校側として一番大切だと思っています。

歯科衛生士全体の魅力でいうと、「できた」の積み重ねをして、自分で自分にマルをつけて、やりがいを感じていけることです。大きな結果がいきなりついてくる仕事ではないんですが、だからこそ小さい「できた」を積み重ねて自信をつける。そうやって自分を肯定する力がないと、この仕事をやっていてもつまらないと思います。

だからこそ、誰かに評価されるわけじゃなくて、自分にマルをつけていくことで、楽しんで長く続けられるのが魅力だと思います。1年目よりも2年目、2年目より3年目の方が楽しいって思って成長していくと、どんどんやりがいも出てきて、気がついたらもう何年もやっているような感じです。さらに、その「できた」が増えることで、患者さんからは「ありがとう」で返ってくるのでいい仕事だと思います。

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2021.12.15 更新