活躍できる職場は増加傾向
「総合病院や公務員も!」
太陽歯科衛生士専門学校教員藤田(ふじた)さん・坂下(さかした)さん歯科衛生士は「就職に困らず、やりがいのある職業」
早速ですが、教員から見た歯科衛生士の魅力はどういったところでしょうか。
坂下氏いろいろありますけど、就職に困らないのは一つですね。歯科衛生士は常に不足しているので、自分に合った職場を選べる仕事だと思います。歯科医院の数も多いので、働く場所が見つからないという事態が起きないのは魅力ですよね。
あと、結婚や妊娠などでライフスタイルが変化しても、働き方を変えて続けられることも大きいです。正社員で続けてもいいですし、子育て中はパートにするなど、長く同じ仕事が続けられるのはメリットだと思います。
藤田氏私自身も子育てしながら、歯科医院でパートをしていた経験もありますが、募集は多かったと思います。最近は多くの歯科医院で福利厚生や制度が整ってきているので、産休や育休も取りやすくなっていて、より働きやすい環境はあると思います。昔に比べて子育てしていても正社員を希望する家庭は増えていると思うので、歯科衛生士ならそういったことも実現できる仕事ですよね。
坂下氏あとは、患者担当制の歯科医院が多いので、やりがいなどもより感じられると思います。患者さんと信頼関係を築いていくなかで、患者さんの状態が改善すれば、自分のモチベーションだけでなく、患者さんのモチベーションも上がることが期待できると思います。
藤田氏また、口腔の病気が全身の病気に影響を与えることがわかっていて、総合病院でも歯科衛生士の採用が増えています。そのほかにも、保健所や保健センターなどの行政で公務員として雇用されたり、高齢者施設での募集や採用も増えてきているので、活躍の場は広がっていると思います。
入学する学生は、歯科衛生士についてどれくらいの知識があるものですか。
坂下氏歯科衛生士についてサイトで調べてわかることの最低限は知っていると思います。
藤田氏専門的なことは入学してから3年かけて学んでいくので、入学前により詳しく勉強しようと焦る必要はないです。ゼロベースから、3年かけて学んでいってもらいます。
「理系がいい」「文系がいい」などはあるんでしょうか。
坂下氏そこまで関係はないですね。生物学など理系の方が多少はいいとは思いますが、資格を取るためには読解力や基礎学力も必要なので、そこは文系だったり。あとは、記憶力や暗記力も大事なので、理系や文系に縛られずにやる気があれば大丈夫です。
教員全員で学生を把握して幅広くフォロー
学生は学ぶことが多くて大変だと思いますが、どういったサポートをしていますか。
坂下氏気持ちの面で学生が問題なく過ごせているかは気にしています。慣れないことも多いので、弱音を聞いたり、相談に乗ったりすることはありますね。教員側も1年生から学生を見ているので、「最近、〇〇さん元気ないよね?」などの話をしたりして、声をかけたりしていますね。
先生方は学生全員を把握できるのでしょうか。
藤田氏そうですね、ある程度は。全教員が各科目で実習などを担当しているので、学生と接することは多いです。ですので、ある程度わかっていると思います。
坂下氏あと、精神面のサポートはもちろんですが、勉強面のアドバイスも心掛けています。放課後に残ってテスト勉強をする学生がいた場合に、どのように勉強を進めているのかなど、教員が様子を見にいくこともありますね。
藤田氏テストで成績が悪かった学生にはアドバイスしますし、実習の練習などを授業以外で行う場合にも一緒に行っています。
昔に比べて、学生の性格や傾向に大きな違いなどありますか。
坂下氏まだ6年目で昔というほど知らないので比較は難しいですが、素直な学生が多いと思います。
藤田氏校風もあると思うので、一概には言えないですけど、何か言ったら実行してくれるので、学生は素直だと思いますね。基本的にはきちんと前向きに取り組んでくれます。
坂下氏しいて言えば、わりと失敗を恐れる感じはしますね。注意されるのを逃れようと保守的に行動する傾向があります。
藤田氏注意されることに慣れていなくて、褒めて伸びるのが今の教育スタイルなんだとすごく感じます。
坂下氏それわかりますね。一方で、みんな性格が優しくて、助け合うことも多くて、良い面もたくさんあります。昔に比べると「自分が自分が」というよりは、みんなで動く感じもありますね。
藤田氏いい意味で協調性はあるけど、自主性となると難しい面もあります。実習先の歯科医院の方から「受け身な学生がわりと多い」という意見も聞きますね。
坂下氏自信がないので声をかけるタイミングを待ったり、恐れてしまっていると思うので気持ちはわかりますけどね。
臨床実習に行って落ち込んで帰ってくる学生も多いのでしょうか。
坂下氏いますね。違う年代の方と接することが多かったり、初めての臨床の場で思うように動くことができなかったり、最初はうまくいかないことが多いです。それでも、それをバネにして頑張る学生も大勢いるので、最終的には社会勉強も含め、実習に臨んでもらえたらと思います。
藤田氏教員はなるべくしっかり話を聞いて、必要なことは伝えながら励ましますね。褒めて伸ばすではないですけど、理解して前向きに頑張ってもらうのが一番なので。
現役歯科衛生士がサポートする貴重な実習!
勉強や実習は大変だと思いますが、学生にプライベートの時間はあるのでしょうか。
坂下氏本校でいうと、2年生の臨床実習が始まる前までは、14時50分で授業が終わります。なので、そのあとは自分の時間を作れます。
藤田氏臨床実習の場合は、8時間は絶対にあるので大変なんですけど、それ以外はそこまでタイトではないですね。あとは、大学生と比べたら夏休みがちょっと短いですが、本校は1カ月あるので、プライベートの時間は十分あると思います。
学校の特徴や魅力はどういったところでしょうか?
坂下氏歯科用の機器が座席にある教室があって、そこで実習のシミュレーションができます。40人近くが使えるシミュレーターがある学校はあまりないので、珍しいと思います。そのほかにも、実習用のユニットはもちろんのこと、超音波の力で歯石などを掃除する超音波スケーラーという最新の機械も整っています。
新しい機械の使い方や技術が学べるのは特徴といえますね。実際に最新機械が使えて、教室がきれいなことを理由に入学を決める学生も少なくないと思います。
藤田氏あと、実習には常勤のインストラクターがいるだけでなく、非常勤の歯科衛生士もいます。非常勤の歯科衛生士の方は、日頃から実際に臨床でバリバリ働いている現役の歯科衛生士です。なので、経験豊富な目で学生の手技などを見てもらえるのは手厚いといえます。
坂下氏実際の現場に近い目線で意見をくれるので、実技に関してだけでなく、実際に患者さんと接する際にはどうすれば良いかなど、貴重なアドバイスがもらえます。現役の歯科衛生士の方が学校の実習に来ることはあまりないので魅力だと思います。
藤田氏あとは、駅からのアクセスのよさも学校の特徴といえますね。日暮里駅の駅前にあり、雨の日でも困りません。電車も山手線のほか、京成線や京浜東北線が通っているので、東京・千葉・埼玉から通学しやすいと思います。
歯科衛生士に必要だと思うスキルや能力は何だと思いますか。
坂下氏スキルは働き始めてからでも身につけられますが、コミュニケーションがしっかり取れることは大事だと思います。あと、周りのスタッフとも連携を取る仕事なので、協調性も大事ですね。
藤田氏私も思いやりやコミュニケーションが大事だと思います。技術は学校で基本を習っているので、働いてからでもどんどん習得できます。実際の現場では、患者さんを一番に考えて行動するので、コミュニケーションや思いやりは特に大事ですね。
個人的にはコミュニケーションは慣れが大きいと思っています。じつは、私も歯科衛生士として新卒で勤めたときに、全然しゃべれませんでした。ですが、そこの歯科医院では毎日朝礼があって、1週間に一回ぐらい順番で5分間なんでもいいから話すルールがあり、最初はみんなの前で話すのが嫌で、前日からすごく憂鬱だったんですけど、不思議なものでそこで鍛えられた結果、人見知りがなくなり、誰とでも話せるようになりました(笑)。
教員の願いは「歯科衛生士の認知度がもっと高まること」
ここ数年で歯科衛生士を取り巻く環境に、何か変化はありますか。
坂下氏国家試験の問題の傾向が変わってきています。歯や口腔以外の知識を持った歯科衛生士が求められていることもあり、患者さんの全身の健康状態からどう判断するかを問う問題が増えている気はします。最近は総合病院や訪問診療、高齢者施設で働く歯科衛生士もいるので、幅広い知識が必要になってきていますね。
藤田氏そうですね。実際に学校で学ぶ教本も分厚くなってきています。逆にいうと、歯や口腔の重要性がより高まっているので、総合病院や介護施設での歯科衛生士の募集は増えていますし、ここ数年でいうと地方も含めて行政の募集も増えています。
坂下氏あとは、患者さんの予防に対する意識が高くなっていると思いますね。早期発見・早期治療というよりも、いかに長生きするかという流れになっていて、予防のために歯科医院に足を運ぶ患者さんが増えています。
藤田氏本当に予防の意識は高くなっていますね。今はネットでも情報を得られるので、患者さんもいろいろ調べていらっしゃって、その情報が正しいかの判断も含めて、歯科衛生士は医療人として知識とスキルを担っていく必要がありますね。
教員として歯科衛生士が今後どうなってほしいですか。
藤田氏歯科衛生士という職業をもっと多くの人に知ってもらいたいです。歯科助手との違いも含めて広めたいです。看護師や保育士は、職業としてみんなに知られています。それに比べると、歯科衛生士は認知度がそこまでないのが残念です。それをどうにかしたい。仕事のやりがいも魅力もメリットもあるので、多くの人が知ってほしいです。
坂下氏どこかで大きく知られるタイミングがあったらいいですね。歯科医院に行ったときとか、学校での歯磨き指導とか、もっと歯科衛生士についてPRの場があったらいいなと思います。何かの大きいきっかけで、変わってくれると嬉しいです。